幸福こうふくに生きぬく糧

blog

9月法話 「万灯会(まんどうえ)」

今年も異常な酷暑の盂蘭盆(うらぼん)でした。全国各地での寺院や神社ではお盆に万灯会が行われます。夕暮れともなると火が灯されて幻想的な雰囲気を醸し出します。

この「万灯会」は、「阿闍世王授決経(あじゃせおうじゅけつきょう)」に基づくもので、一万基の灯明を献灯して滅罪や懺悔(ざんげ)を行う法要です。わが国における最初の万灯会は奈良時代まで遡り、天平16年(760)に東大寺並びに朱雀路で一万基の灯明を献灯したことに始まります。

また、平安時代の天長9年(832)に弘法大師が高野山で万灯会を行ったことは良く知られています。弘法大師はその法会の願文の中で万灯会を行う目的について「仰ぎ願わくはこの光業(こうごう)によって自他を抜済(ばっさい)せん」と述べています。つまり滅罪や懺悔だけでなく、この万灯の智慧(ちえ)の光によってすべての人びとを悟りの世界に引き入れようとするものです。さらに弘法大師は、この万灯会を「虚空尽き、衆生尽きなば、涅槃尽き、我が願いも尽きん」と述べているように、虚空が尽き、生きとし生けるものが存在しなくなるまで、悟りは尽きることがなく、我の願いも尽きて亡くならないので永遠に万灯会を行い、人びとを救い続けるという誓願を立てています。

殺人や強盗などが日常茶飯事となっている現代社会。わが国に住む一億人のす

べての人びとの心に他人を思いやる心や慈しむ心の智慧の灯火を灯したいものです。